人間誰しも永遠に生きられるわけではなく、必ずいつかは終わりを迎えます。その終わりを迎えた際に他の生きている人達で送るのが葬儀であり、葬儀をすることが必須ではありませんがそこは日本の風習もあってか「なくてはならない」存在となっているのです。それ故に葬儀には需要が存在しています。
そんな葬儀もビジネスとして企業が経営しているものであり、営業の仕事も存在しているのです。葬儀で営業というのはイメージが沸き難いことですが、仕事内容と求人事情はどのようになっていて、採用されるとすれば何が必要になるのでしょうか。
葬儀営業の仕事内容
葬儀を取り扱う企業がする仕事は、葬儀が必要な人から依頼を受けて葬儀を企画することです。実際に人…「故人」がいなければ葬儀屋は仕事はすることができません。そのため葬儀の営業はそのような葬儀を必要とする人相手に葬儀を商品として提供することにあります。
その営業先としては個人の家もあれば、最も死と関連性のある施設、病院や警察になることもあるのです。他にも葬儀をするための場所として、寺院を始めとしたところに営業することもあります。企業によっては営業だけで終わらず、その葬儀の契約をした人の葬儀の企画から進行までを担当することもあるのです。
営業においては特に病院を相手にすることが重要であり、ここを取引先として契約できれば仕事を確保することができます。逆に個人を相手に葬儀の提供をすることはそこまでありません。個人の家宅へ行く場合には葬儀屋、互助会の会員勧誘で行くというケースが多いです。
仕事としてはどうか
企業によっては営業だけでなく葬儀をどう進行するかも考えなければいけません。特に大手ではなく小さい企業だと、兼用して仕事をさせられることが多いのでその分負担も大きくなります。そこも含めると仕事としては難しいというよりも「きつい」という表現が正しいでしょう。
何よりも辛いのが葬儀は人の死に携わる仕事であり、言い方を変えれば「人の死を仕事にしている」ことになります。しかも家族が死んで気落ちしている遺族相手に「すぐさま」営業をしなければいけません。しかも仕事によっては「誰かが死にそうになっているところ」で営業をすることもあるのです。
こうした一見「無神経」に見えることもあり、人によっては葬儀屋の存在に嫌悪感を出す人もいます。それこそ病院で待機していれば罵倒されることもあるのです。しかし故人を送り出すにおいて葬儀は必要なので、そこも掻い潜って営業をしなければいけません。
更に営業でも人の死に携わる仕事なので「遺体」を見るのも珍しくありません。場合によっては「綺麗」ではなくとても見るに耐えない凄惨な状態のを見ることもあるのです。このような意味でも精神的にきつい仕事になっていて、これに耐えられないと感じる方は選ぶべきではありません。
このようになっているためか、離職率も高めの傾向です。
互助会という問題
互助会の会員勧誘による営業も多くなっていますが、それと同時にこの互助会の営業に対するトラブルも増えています。これはシステム的な問題もあり、非常に「詐欺がしやすい」ものになっているのです。それ故に利益目当てで会員勧誘をする問題のある企業も多くなっています。
実際に営業でこの互助会の会員勧誘をするとなると、ほとんど知識なしでやっている、やらされていることが多いです。ブラック企業が無理やりさせていることもあれば、営業側が「確信犯」で獲物を狙ってしていることもあります。正に「人の死を食い物にしている悪魔の所業ともいえる行為」です。
もちろん互助会をしている企業全てが悪徳なところではありません。しかし一般の方が互助会に対するトラブルを耳にする機会が増えているのは事実です。それ故に互助会の会員登録をしようと考える人は減り、営業としてはかなりやり難い環境になっているでしょう。
互助会の営業に携わることが間違いではありません。しかしこのような状態を考えれば、葬儀の営業の転職先として互助会を担当する企業はあまりおすすめすることができないのです。
待遇、年収について
営業に限った話ではありませんが、葬儀に関わる仕事は特にどこの企業で仕事をするかで年収も大幅に変わってきます。しかし大手とされる企業でも平均で五百万程度になるので、特別高い年収を狙うのは難しいです。大手でなくなると、更に低くなって仕事量に見合わないものになることが多くなるでしょう。
営業となれば実績によってチャンスはありますが、葬儀となればそう簡単に契約が多く取れるとは限りません。高年収を狙える可能性がないとはいえど、あまり期待しない方がいいです。
一方で自分で葬儀屋を営業するという形態もあり、こちらは上手く契約を取ることができれば千万狙うことも可能です。しかし上手くいけばの話で、大抵は上手くいかないことが多くリスクも高いので難しいことになります。
待遇に関しては葬儀という性質上、いつ仕事が入っててもいいように24時間365日営業が基本でありシフト制になっているのです。シフト制ではありますが場合によっては休日出勤もする必要が出てきます。しかし福利厚生等の待遇はブラックでなければ完備されていることが多いので、そちらの待遇面は問題ありません。
葬儀営業の求人事情
離職率が高く、人手不足もあってか求人が頻繁に出されていることが多いです。正社員で募集しているところも意外にあるので、正社員での転職も苦労はしないでしょう。しかし肉体的、精神的にきついのはもちろんですがそれとは別に葬儀業界もブラック企業は存在しています。
ただでさえきついのにブラックに入ってしまえば、自分自身が故人になってしまう危険性が高いです。問題のあるところは求人に嘘が書かれていることも多いので、企業についての情報を調べて判断をしましょう。特にノルマの有無は重要で、人の死を取り扱うものなので普通はノルマが存在していないことが多いです。
ネット上には葬儀業者の選び方について情報が掲載されているサイトがあります。良い業者は仕事をするにおいても良いところになるので、こうした業者の評判や口コミも参考にして選びましょう。
他に気をつけたいこととして求人によっては「営業職」として募集してはいなく、実際に応募して採用されないと分からないということがあることです。この場合には書類選考、面接まで営業職を希望することを企業側に提示する必要があります。
基本的に葬儀業界は資格や経験がいる世界でないので、未経験でも探すのに苦労はしません。しかし「きつい」仕事にはなるのでそこは覚悟して挑みましょう。
転職に有利な経験
葬儀業界なので、営業以外で葬儀の仕事の経験があれば有利にはなります。しかし葬儀の仕事を事前に経験して、そこから営業に行こうとするという方はあまりいないでしょう。経験がなくても問題がないので、経験についてはそこまで考えなくてもいいです。
葬儀営業に採用されるには
経験や資格はいりませんが、自動車を運転する必要が出てくる可能性が高いので自動車免許の取得はしておく必要があります。他の営業と同じように普通でも問題ないので取得しておきましょう。
しかし一方で葬儀の仕事は遺体を扱うことになるので、それを見ても平常心で仕事を進めることができる精神力が必要となります。心の弱い人は仕事を続けていれば参ってしまう可能性が高いです。営業でも葬儀の仕事に携わるのであれば、自分の心を鍛えるようにしましょう。
前向きに物事を考える等以外にメンタルが弱ってしまう原因は自身の健康にもあります。健全な肉体は健全な精神を宿るといいますがその通りで、常に健康を意識すれば自然と精神的にも強くなるのです。
転職に有利な資格
葬儀の営業で転職に必要な資格はありませんが、持っていると有利な資格というのは存在します。葬儀の資格として有名なのが葬祭ディレクターというものであり、葬祭業界で働くにおいて必要な知識、技能を持っていることを示します。国が認定する試験なので、信頼性の高い資格です。
しかしこの資格を取得するには、実際に葬祭の実務経験を一定の年数積まなければいけません。このこともあって葬儀の営業に転職するのなら狙う必要がない資格といえます。
向いてる人
死を取り扱う仕事なので、それに向き合うことができるかどうか、それに相応しい心持ちをしている人間が向いているといえます。「遺体と付き合っていく」ことができるかどうかがポイントであり、できないのであれば転職先として考えない方がいいでしょう。
遺体があれば遺族もいて、特殊なケースはありますがそのほとんどが家族が亡くなって悲しんでいる状態です。営業の仕事はそのような人達と話をすることになるので、遺族の気持ちも考えられる誠実な人間が必要になります。逆に営業力が高くても、それを考えられない人間は向いていないといえるでしょう。
しかし逆に相手の気持ちへ偏りすぎるのもいいことではありません。それでは葬儀を進めることができなくなってしまうからです。そのため相手の気持ちを考えられつつ、葬儀についても進めていくことができるスキルを持っている方が向いているといえます。
履歴書、職務経歴書について
企業側が営業として応募していない場合は、何はともあれ営業として応募することを志望動機に記載する必要があります。しかし単に「営業をしたい」というよりは、理由も踏まえて営業を狙う理由を書いた方がいいです。
葬儀となると年収や待遇よりも、仕事の内容と葬儀業界から来る目的が多いでしょう。これに関しては感情面の理由が強くなることが多いので、自分なりに考えてみるしかありません。人と人との関わりが大事になるので、そこを前面に押して書いてみるといいでしょう。
過去に葬儀業者を利用して、それがきっかけであればエピソードとして盛り込むのが、分かりやすく印象に残ります。資格、経験が必要にならないので職務経歴書に関してもそこまで凝って書く必要はありません。しかし適当に書けばマイナスになってしまうので、自分なりに誠意を持ってまとめましょう。
履歴書は手書きで
今の時代において履歴書は手書きだけでなく、パソコンを利用して作成することも可能です。パソコンの方が修正も容易であり、自分なりにオリジナルの履歴書を作ることができるとメリットが多くなっています。
しかし葬儀業界の仕事に携わるのであれば、パソコンではなく手書きで書くようにしましょう。実際に仕事をすると、手書きで書類を書くことになるケースが多く、パソコンで書いてしまうと「手書きに自信がない」と取られてしまう可能性もあるからです。もちろん手書きをする時は丁寧に書いてください。
面接について
とにかくきつい仕事であり、他と比べると肉体面よりも精神面が問われます。そのため面接でもほとんどの企業が「(精神的に)大丈夫か?」という趣旨の質問が出てくる可能性が高いのです。これは企業だけでなく面接相手によってやり方が違ってきて、中には一見関係のない質問が相手の精神面を見極めるためのものであったということがあります。
そのため中には「エグイ」質問をしてくることもあるのです。現にきつい質問は本人の精神面が問われてくるものであり、こうした質問をすれば簡単に判断することができます。冷静に対応できるように、面接前に覚悟しておきましょう。
もちろん基本的な質問も出てくるので、その対策は必要です。全体的に葬儀屋で仕事をすることへの意志を「強く」伝えることがポイントになります。伝えられれば言葉足らず、少しおかしくなってもいいので、自分の思いをぶつけましょう。
このため迷いがあるのなら葬儀業界に転職しない方がいいです。
まとめ
死を取り扱う仕事なので、他の営業とは違う方面で精神面が強く問われてくるのが特徴です。それを考えなければ資格と経験は必要なく、待遇面も悪質な企業を選ばなければ悪くないので、営業未経験としての転職先としては悪くありません。営業の経験を積んで、他の職種の営業に行きたいのであれば考えていいでしょう。
しかし営業とはいえ、葬儀に関わって遺体というものを見ることになります。人によっては「忘れられない」ことになり、いつまで経ってもそれが印象に残り、記憶にこびりつくことになるのです。「死」というものはそれだけ重いといえます。
それと向き合う勇気があるか、今後の人生の糧にできるかどうか、葬儀業界に入るのなら仕事の経験以外にもこのような人生観を考えてもみるといいでしょう。