出版社は書籍、雑誌を発行するのが仕事の職業です。しかし単に発行すればいいというわけではなく販売するのであれば読まれる、売れるように働きかけなければいけません。では出版社の営業職とはどのようなものであり、転職においてはどのような状況なのでしょうか。
出版社の営業の仕事内容
出版社は書籍、雑誌を発行するのが仕事でありそれを販売するために働きかけます。こうした書籍は様々なところで販売されますが最も販売されるのに中心となる場所は書籍店、本屋です。そのため出版社の営業は本屋へと赴いてそこで仕事をすることになります。
書籍、雑誌共々新刊の説明をしてその上でどのようにそれを書店で扱うか提案するのです。物によってはイベントを開催することもあり、そのイベントの手助けをする仕事もあります。場所にもよりますがありとあらゆる書店を訪問して営業するのです。
しかし出版社の営業の仕事はこれだけでは終わりません。更に目的とする書籍の販売を促進するため書籍自体の売れ行きの調査をしたり、催促するための企画品を提供します。書店でポスターを見ることがあると思いますが、あれを企画するのも出版社の営業の仕事なのです。
雑誌を見ている方であれば分かると思いますが、中には広告のようなものが掲載されています。この広告を掲載してくれるスポンサーを探すのも営業の仕事で、広告媒体自体を探すのも含まれるのです。こうした広告を主体とした仕事をするのは広告営業というタイプに分類されます。
広告営業タイプは広告での収入を増やすのが目的であり、時には新規で広告を取ってくる必要があるため営業の難易度としては高めです。広告営業の他には取次営業というタイプもあり、こちらは本屋は本屋でも本の問屋と称される取次会社をを主体に営業する仕事します。
本屋はこの取次会社から本を入荷しているので幾つもの本屋に訪問するよりも遥かに影響が大きいのです。営業としては自分達が押す新刊を必要な部数、本屋に配布してもらえるかどうか交渉していきます。この結果で出版社の売上も大きく変わるのでこの取次営業は出版社の中ではかなり重要な立ち位置になっているのです。
これらを見れば分かるように出版社の営業は経営をしている人間、法人を相手に営業をする仕事となっています。どのような仕事を任せられるかは出版社によっても異なりますが、どれでも法人が相手というのは変わらないでしょう。逆に言えばどの仕事でも一定の難易度を誇るということです。
出版社の場合は大手か中小かでその待遇は大きく変わってきます。中小であれば努力したとしても五百万程度になってしまいますが、大手となれば千万を超える可能性も出てくるのです。もちろん大手であれば難易度が高い営業を求められることにもなるため、それ相応の実力が必要となります。
出版社の営業の求人事情
今ではネットが当たり前の世界となっていて、通販で物を購入するというのも詳しい人だけでなく一般人でも当たり前となっています。そのネットを利用しての一環として電子書籍というものが出てきて、それによって実物の書籍ではなく電子データとして本を読むことができるようになりました。
しかしこの電子書籍の登場は出版社に打撃を与える結果となっていて、それによって出版業界は縮小状態にあるという有様です。出版社はもちろんですが本屋も同様であり、過去に比べると書店も段々と減少していっています。これがもたらすのは出版の営業の「不要」という点です。
このことから分かるように出版の営業の求人は少なくなっていると考えていいでしょう。将来的にどうなるかは分かりませんがこの傾向が続くようでは求人が少ないどころか「なくなる」可能性もあります。そうなれば出版社の営業を目指すこと自体ができなくなってしまうのです。
通常はもちろん、中途採用に関しても営業以外は積極的でも営業はそこまでのものではないということが多くなります。中途採用に関しては大手より中小が人員補充を目的で行うことが多いです。
こうした状況から分かるように未経験が目指すのは厳しい世界であるといえます。未経験でも可能性がゼロではなく中途採用で応募して採用してもらえるというケースはあるでしょう。しかし年々出版社が減っていっている中ではその確率も絶望的と考えた方がいいです。
未経験でなくても求人が少ないとなれば当然競争率も激しいものとなります。特に大手の倍率は高く、営業として優秀な人間でないと採用されることはないでしょう。そのため経験と実績がないと大手は絶望的で、足りないと思う方は中小に行くしかありません。
営業ではなく他業界や職種からの転職に関しては出版ということもあって本に関わる仕事をしていればそれが武器になります。本屋が営業の舞台になるように本屋で仕事をしていた経験があれば少しは有利になります。実際に「現場」で働いてた人間であれば様々なことを知っているのですから。
何より本屋での仕事というのは本が好きでなければやっていけない職種でもあります。この「本が好き」という要素は出版の営業において最も重要であり、本に興味がなければ営業として販売する書籍や雑誌に熱心になることはできません。この意味もあって本屋から出版の営業へと転職するのは「あり」といえます。
しかし営業の経験がないことは事実であり経験者に比べると不利、未経験に比べると有利という立場です。営業に関しての知識や情報に関しては集めておかなければ書類選考、面接に太刀打ちすることはできません。
他にも広告営業は広告を利用するためそうした広告に関係のある仕事に携わっている人であれば有利になるでしょう。取次営業に関しては取次会社が関わってくるため営業でなくてもそこで働いていた経験があれば有利となります。最も取次から出版社に転職しようと考える人がいるかは不明ですが。
出版社の営業に採用されるには
営業であるため対人スキルが必要なのは前提としてありますが、出版社の場合には企画力というものが必要となります。出版社の営業は他と違って書店でのイベントも企画する必要があるため、そこでどのような企画ができるかというのは重要です。
これに関しては実際に何かを企画したりしなければ身に付きません。仕事以外でも何か企画を考えるようなことを経験して身に付けていくのがいいでしょう。企画という都合で日頃から常にそうしたことを思考しておくのも必要です。
求人事情のところにも書きましたが「本が好き」というのも必要であり、逆にこの「本が好き」という面がなければ向いていないといってもいいでしょう。しかし気をつけたいのは「本が好き」というのはオールマイティに好きということであり、漫画や小説と特定の物のみが好きではやっていけません。
資格やスキルに関しては所持していたとしてもそこまで大きく有利になるものではありません。しかし広告が関わってくる場合には広告を作成する能力があれば多少は有利になるかもしれません。
履歴書、職務経歴書について
志望動機に関しては未経験、経験ありのどちらでも自分が出版での営業の仕事ができる、ということをアピールするような文章にするのがいいです。そのためには出版社の営業の仕事内容と絡んで仕事をしたい理由を書くようにした方がよく、仕事内容についてよく理解しておく必要があります。
もしくは本を絡めて仕事をしたくなったという意欲をアピールするのもいいです。それこそ「本がこのように好きなので」というエピソードも絡めるといいでしょう。自信があるのなら「こうしてみたい」ということを書けば、仕事に対する意欲をより強くアピールできます。
職務経歴書に関してはそのまま以前の仕事を書いていくことになりますが、出版の営業の仕事に役立つとされる経験をアピールするように書きましょう。
面接について
就職でも転職でも面接においては面接でどのような質問が出るかを想定してその対策をしておくのが基本です。しかし出版社の営業にて用意しなければいけないのは「質問の答え」だけではありません。何かしら「企画」も考え、資料にして持っていく必要があるのです。
どのような企画を考えればいいかは出版者によっても異なり、その出版社に合うとされるのを考えていきましょう。もちろん企画を持っていけばそれに関する質問が出てくるのは当然です。そのため何を聞かれても答えられるように様々な観点からの答えを持ち合わせておきましょう。
本が関わっているということで本に関する質問が出てくる可能性は高いです。普段読んでいる本、自分が印象に残った本、と様々ですが「本好き」であれば難なく答えられるようにしなければいけません。本も様々で明確な答えは決まっていませんが、本自体の内容も交えつつ答えるようにしましょう。
雑誌の場合には時事関係の質問が確実といっていい程出てきます。そのため時事に関するニュースには一通り目を通して頭に入れておきましょう。当然自分の意見も持っておかなければ答えられないので、見るだけでなくどのような印象を持ったかも考えておく必要があります。
企画はもちろんですが「このような時にあなたはどう感じるか、行動するか」というシチュエーションを挙げて答えを聞く質問も珍しくありません。どのようなシチュエーションが出てくるかは分からず事前に考えておくのが難しいため、これに関しては出版の営業の知識から考えて答えるしかないです。
こうした出版社の営業ならではの質問も多く出ますが、そればかりに目が行って基本的な質問に対して答えられないという事態にはならないようにしましょう。志望動機はもちろん、自己PRも忘れずに考えておいてください。
まとめ
求人事情でも触れたとおりに出版社の営業は衰退に向かっているのが現状です。大手はまだそれなりの待遇はありますがそれも時間が進むにつれて悪化し、満足の行く待遇を受けることができないというケースも出てくるでしょう。
今後も営業で仕事をしていきたいと考える場合には、このような事態もあって出版社での営業を選ぶのはおすすめできません。そのため本が好きでどうしても関わりたいと考える人だけが選ぶようにした方がいいです。